工場の排気ガスから海を渡り飛来する黄砂まで,大気環境の汚染はさまざまな物質と規模が関わる,複雑な課題である.その解明と解決のため,「化学輸送モデル」を用いた解析が活発に取り組まれている.
本書では,化学輸送モデルを正しく使用するために必要となる事柄が包括的に解説されている.はじめて学ぶときだけでなく,知識を整理したいときや研究で困ったときにも役に立つ,必携の一冊である.
〈本書の構成〉
●第Ⅰ部(基礎理論)
モデルがどのような物理・化学過程を扱い,どのような規模・状況に適用できるのか.その中身をブラックボックスとしないための基礎がまとめられている.
●第Ⅱ部(数値計算技術)
モデルはさまざまな要素を含み複雑で,理論的に解くことは難しい.実際の現象へ適用するために,数値的に解析する手法がまとめられている.
●第Ⅲ部(応用例)
モデルを現実の環境問題へ適用した事例を紹介する.さらに,実際の観測データと連携し,予測の精度を高めるための発展的な手法も解説する.