古代から人類が頭を悩ませてきた「時間」という謎。近年、神経科学や認知科学では、脳と時間の関係についての理解が急速に深まっている。ヒトや実験動物で行われる多彩な研究で見えてくるのは、脳は時間をさまざまに処理する装置であること、つまりは精巧な「タイム・マシン」としての脳だ。本書では、「時間」にまつわる脳研究の第一人者が、最新の研究成果を概観しつつ、哲学や物理学の議論も参照しながら、脳科学が時間について明らかにしてきたことを描き出す。脳は時間をどう処理しているのか? 脳科学は、古来からの「時間観」をいかに揺さぶり、そのアップデートを迫るのか?
――人類史上最難関の謎に、全方位から挑んだ意欲作!
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「ヒトの脳はタイムマシンとして最高の逸品だ」。著者の卓見に私は深くうなずいた。そしてこの本こそ、時間の問題をあらゆる角度から論考した「最高の逸品」であることを確信した。哲学・物理学の主流が立脚する時間の「永遠主義」と私たちの素朴な印象に寄り添う「現在主義」の相克をこれほどわかりやすく描き切った書籍を私は知らない。「時間とは何か」に関心を持つあらゆる分野(哲学・心理学・言語学・物理学・神経科学・時間生物学・比較認知科学)の学徒の必読書。
――北澤茂(大阪大学教授・新学術領域「時間生成学」代表)
時間とは何か――。誰もが答えを知っているようで、実は誰もきちんとわかっていない。考えたこともなければ、考えようとさえしない、いや、考える価値があるなどと考えたこともない。それほど身近な「時間」だが、脳の視点から眺めると、これまでの常識がぶっ飛ぶ。時間は異形の怪物だ。ひとたびページをめくれば予想だにしない思索の世界に誘拐される。その快感を味わって欲しい。
時間を忘れて没頭すること請け合いだ。
――池谷裕二(東京大学教授・新学術領域「時間生成学」計画班員)
素晴らしく、魅力的で、内容の濃い本。
――ジョセフ・ルドゥー(神経科学者)
ブオノマーノは、ホーキングが時間の物理学で成したことを、時間の神経科学でやってのけた。
――クレイグ・カレンダー(哲学者)
哲学から神経科学に及ぶ豊饒なアイディアをさばき、この物理的世界のなかの我々の立ち位置について、よりクリアな像を描いてみせている。
――ショーン・キャロル(物理学者)