丸棒のような機械材料を引っ張ると,くびれを生じ,やがてくびれが進行して破断するのが,マクロな世界での延性材料の塑性変形です.
一方,ミクロな世界では,原子は規則正しい配置をしているが,引っ張りを受けると,その配置を維持できなくなるという,転位などの欠陥という力学挙動が生じます.
しかし,ミクロな力学挙動とマクロな塑性変形を結びつけて語るのは簡単ではなく,そこにはミクロとマクロを繋ぐメゾスケールにおける力学体系(メゾメカニクス)が存在します.
本書は,そのような転位に代表される材料の欠陥の力学挙動と,マクロな塑性変形を理解するための基礎的な事項を中心にまとめたもので,いわば「塑性の物理(physics of plasticity)」に関する初学書です.