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「アコーステック・エミッションの特性と理論 第2版」

まえがき詳細目次


第2版のまえがき

 近年いろいろな事故で問題とされているように各種構造物の破壊現象は,多くの場合人類に災難や被害をもたらし,安全で快適な生活を送るうえで障害となります.コンクリート構造をはじめとする社会資本を構成する構造物は,一般に耐久性あるいは微細レベルでの欠陥に対する耐力が大きいことが知られていますが,最近の様々な事故事例などから,安易に破壊に対応することは,例えひび割れレベルの微小なものであっても許されなくなっています.

 アコースティック・エミッション(Acoustic Emission :AE)計測は,マイクロクラックの発生に伴う弾性波を検出する技術であり,微細レベルでの破壊現象に対して高い検出能力をもった計測技術です.そのため微細ひび割れの検知による「構造物診断」への展開や,「破壊現象」そのものの分析に有用とされてきました.古くから鉱山の落盤予知などに実績を挙げていましたが,アメリカでポラリスミサイルのロケットモーターケース(ロケット本体)の耐圧試験での欠陥検出能力で注目され,その後,圧力容器やタンクの欠陥検出に有用性を発揮し,非破壊検査法として確立されて今日に至っています.

 最近では,金属・機械工学分野から土木工学分野や化学工学の分野にも研究は広がりを見せ,実用的な検査法として確立され,新たな分野へのさらなる適用が注目されています.

 改訂版の発刊に際しては,そのような最新の研究動向をできる限り取り込むように配慮しました.また,恩師丹羽義次からの依頼により,監修を外させていただき,このように「まえがき」も全面的に改訂しました.

 今回の出版にあたり初版を読み痛感したことは,仕方のないこととは言え,その後に発展した分野の解説が不十分であることでした.振り返れば,初版の頃に実際に多くの研究者の方からの問い合わせなどを受けたのは,AE波形の解析理論の部分であったと思い出されます.しかし,当時は執筆に際して理論の導入と解説に重きをおいた結果,理論的な内容は第5章で簡単に触れただけでした.今日に至るその後の発展を考えれば,ここは大幅な修正と加筆が必要となりました.また,その他にも,第3章の破壊過程に関する研究成果には注目すべきものが多く報告されており,これを加筆してかなりの部分を書き換えました.さらに,第6章は現在では有用とは考えられない内容と思われたので,全面改訂が必要となりました.特に,実用化への展開に関して,コード化の試みについての成果は不可欠と考え,記述させていただきました.

 我が国でAE検査法に関しては,(社)日本非破壊検査協会のAE特別研究委員会が30年以上の歴史を有し,現在までに2年毎に16回の国際会議を開催し,世界のAE研究の中心をなす組織として活動してきています.そして,すでに7 件の規格を制定しています.

 最近の研究の動向をみれば,世界的に基礎研究から応用あるいは実用研究へと向かいつつあります.その中でも,特に活発な研究を展開しているのが,我が国の研究であると世界から認められています.近年,注目され始めている構造物のヘルスモニタリングでもAE検査法は,リアルタイムで欠陥形成を検出可能なことから,その一翼を担う重要な検査法であると認知されています.このような背景からリニューアルに至った本書が,微力ながら読者の教育・研究上の糧となれば幸いです.
平成17年5月
筆者記す

まえがき

 この書物は,監修者が京都大学を定年退官する際に計画された記念事業の一つとして,門下生の一人である大津政康君が永年の研究成果を基にして著作したものである.その内容は監修者の一連の“高堰堤設計の合理化に関する基礎的研究”の中に芽ばえ育ったものであるので,次にその経緯について述べてみたいと思う.

 この研究の起源は遠く昭和21年の終戦直後にさかのぼるが,当時,資源に乏しい我が国は戦災を復興し産業基盤を整備するため,先ず治水と利水(農工業用水・水力発電等)の目的から高堰堤(ダム)を早急に築造することを緊要とした.それで大ダム建設に必要な技術開発のため,ダム構造解析が理論及び模型実験により,また堤体コンクリートに関する研究が並行して強力に推進された結果,その技術は短時日のうちに欧米の水準にまで到達した.そして,佐久間,井川,黒部川第四ダムにみられる世界的な大ダムが次々に完工した.その後,電子計算機の目覚しい発達もあって,堤体を第1次近似として均質な弾性体として取り扱う限り,その力学的挙動をほぼ完全に解明できるようになった.

 しかし,ダムの堤体を支える重要な基礎岩盤は断層,亀裂,節理,シーム等を含んだ不均質な不連続体であるため,第1次近似としても均質な弾性体と見做すことはできず,その力学的本質をどのように把握するかは大きな問題として取り残されたままであった.それでダム研究の次のステップとしては当然岩盤を対象とし,先ず岩盤を構成する岩石の破壊強度から手がけることになった.このため大型三軸試験機(上下200ton,水平2方向各100ton)を試作し,まず破壊現象の巨視的考察として破壊曲面(三軸応力場における破壊条件を構成する曲面)を考求し,かなりの成果をおさめた.しかし研究者の次の欲望として,供試体中の何処で,どのような破壊が起こり,それがどのように発達して全体破壊に至るのか,見えない供試体の中を覗きたくなった.もちろんこれは不可能な話であるが,破壊のある一つの段階における内部の状態は,供試体をスライスにすることによって,ある程度微視的に肉眼で観察することができた.

 しかし欲望は留る所を知らないものであり,次には破壊の進行を連続的に捕えたくなった.この段階で,材料の微小な内部破壊により発せられる破壊音(アコースティック・エミッション)を表面でキャッチし,破壊源を求めると共に,その波形解析によって破壊のメカニズムを明らかにし,また更に,その発生頻度や振幅分布によって破壊過程を推定しようとすることを試みた.このようにして今日,岩質材料の破壊現象に対して多くの顕著な知見を得ることができた.

 この書物の内容は,上述の経緯に従って先人の業績を調査し,その研究成果に立脚して研究室において岩質材料を対象にして行って得た研究成果を取り入れ,“アコースティック・エミッションの特性と理論”として取りまとめたものである.未だ不十分なものであるが,今後のこの分野の研究・教育の一助となれば誠に幸いである.
昭和63年5月
監修者記す


目次

第1章 はじめに
1.1 アコースティック・エミッション
(1)アコースティック・エミッションとは何か
(2)発生原因とメカニズム
(3)対象となるAE現象
1.2 AEの歴史
(1)金属分野
(2)岩盤および地震学の分野
(3)コンクリート分野
(4)その他の分野
参考文献

第2章 AE計測法
2.1 計測技術
(1)基本的な原理
(2)増幅器とフィルタ
(3)AEセンサ
(4)検出上の留意点
2.2 計測機器
(1)AE信号の処理
(2)分析パラメータ
(3)計測システム
参考文献

第3章 材料の破壊過程とAE特性
3.1 発生頻度
(1)材料のAE挙動
(2)部材のAE挙動
(3)カイザー効果
3.2 振幅分布
(1)AEの振幅規模別頻度分布
(2)種々の材料のAE振幅分布
3.3 レートプロセス理論に基づいた損傷度評価
(1)コンクリート・コア供試体の圧縮試験
(2)レートプロセスと損傷パラメータ
(3)相対的損傷度の評価
参考文献

第4章 AEの波形分析
4.1 破壊源探査
(1)探査手法
(2)破壊源探査の実際
4.2 スペクトル分析
(1)周波数分析の理論
(2)計測系の周波数応答
(3)AE波形のスペクトル
4.3 パターン認識
(1)波形情報の認識と分類
(2)スペクトルを用いたパターン認識
参考文献

第5章 AEの基礎理論
5.1 弾性波動
(1)AE波の発生と伝播
(2)検出される弾性波動
(3)解析理論
5.2 発生機構の解明
(1)シミュレーション解析
(2)逆合積
(3)モーメントテンソル解析
参考文献

第6章 AE計測法の展望
6.1 概論
6.2 鉄道構造物の損傷監視
6.3 発電所の蒸気タービンの損傷監視
6.4 コンクリート構造物のAE試験方法
(NDIS2421)について
6.5 AE法によるコンクリートでのひび割れ監視
(JCMS-III B5706)について
6.6 埋設管水路の漏洩監視
6.7 まとめ
参考文献

あとがき

索引

アップデート:2009/04/08

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