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「入門 信頼性工学」

まえがき詳細目次


まえがき

 私たちが安心して生活するためには,あらゆるものを信頼できなければならない.とりわけ,身のまわりの工業製品には,所期の目的を的確に果たすことが望まれている.信頼性工学は,そのような要求を確率論的に保証する基礎学問である.単純な道具では問題にならなかったことが,機能が多様化し,複雑な構造になるにつれて,系統だった取り扱いをしないと,信頼性を保証することが困難になってきた.社会の進歩が要求し,生み出した学問が,信頼性工学である.工業製品が,壊れず,誤作動せず,約束どおり,期待どおりのはたらきをすることは,信頼性工学の成果である.

 もともと,壊れず,壊れたとしても容易になおして使用できるということは,工業製品に対してつねに要求されてきた課題である.「失敗は成功のもと」というように,過ちの発生原因をさかのぼって追求することも信頼性を向上させる手法かもしれないが,それが予測できるものであるならば,前もって対策を講じて防止するにこしたことはない.信頼性を高めるために大切なことは,信頼性評価の考え方を理解し,その取り扱い法と活用法を学ぶことである.さらに,製品の構想から廃棄までの間に起こるさまざまな問題を克服することを通して,総合的に信頼性を高め,工業製品の価値を額面どおり活用できるようにすることが必要である.

 これからの機械技術者は,葉を見て木を知り,木を見て葉を知るといった感性を自らがもって,工業製品に生じるであろう問題点を把握し,さまざまな知識を活用し,最適解はあっても正解のない課題に対応できるデザイン能力をもたなければならない.確率の問題である信頼性に関しては,確率・統計学の知識に精通し,この知識を工業製品の信頼性評価に応用し,信頼性を高める能力が要求されている.さらに,統計値を生み出す評価試験の実際を把握しておく必要もあるし,派生する不可避の問題を適切に処置する能力も要求されている.

 そういう視点から,本書は信頼性工学をはじめて学ぶ学生のための入門書として,信頼性工学で使用する用語とその定義,信頼性データの解析法,信頼性の評価法をできるだけ平易に説明することをめざしている.とくに統計学との関連,その使用法に的を絞って,工学の基礎学力と工学的思考法を応用しつつ信頼性に関する種々の固有技術を学習し,それらを統合して学ぶことが適正と考えて,本書は構成されている.そのため,信頼性工学で使用する統計学の応用については,実学的に多くの例題と問題を設定して解析手順を明示し,より難しい課題への関心を深めるように努めた.

 この15年間の講義「信頼性工学」をまとめたのが,本書である.レポートや試験の採点をとおして,学生が理解し難いのかなと感じたこと,自分で問題を解くにあたり困ったこと,パソコンで処理するのに苦労したことなどを文章として適切に表現することは難しいというのが実感である.授業において「99%は正しいけれど,1%は間違っているかもしれない」とか,「教科書が正しいとはかぎらない」といいつづけてきた自己を振り返り,読者が本書をとおして信頼性工学に取り組むきっかけの一助になれば幸いである.なお,浅学,非才ゆえに,最善の努力はすれども,不十分な部分や誤りがあるかもしれない.ぜひ,読者のご叱正を賜りたい.

 最後に,本書の出版に当たり,多大なご理解とご尽力を賜った森北出版の大橋貞夫氏,石井智也氏ほか関係者の各位に深く感謝の意を表します.
2006年6月
福井泰好


目次

第1章 信頼性工学の概要
1.1 信頼性工学とは
1.1.1 信頼性工学の起源
1.1.2 信頼性工学の枠組み
1.1.3 信頼性への要求
1.1.4 製造物責任と安全性
1.2 信頼性技術
1.2.1 信頼性の概念
1.2.2 信頼性の評価基準
1.2.3 信頼性設計
1.3 信頼性の特性値
1.3.1 信頼度の定義
1.3.2 保全度の定義
1.3.3 故障率の定義
1.3.4 アベイラビリティの定義
演習問題[1]

第2章 確率と統計学の基礎
2.1 事象と確率
2.1.1 数学的確率
2.1.2 統計的確率
2.1.3 順列と組合せ
2.1.4 独立試行の確率
2.1.5 確率の加法定理
2.1.6 確率の乗法定理
2.2 資料の整理
2.2.1 標本調査
2.2.2 度数分布
2.2.3 代表値
2.2.4 散布度
2.2.5 平均値と標準偏差の関係
2.3 確率分布
2.3.1 二つの変数の和の平均値と標準偏差
2.3.2 連続変数
演習問題[2]

第3章 信頼性測度の基礎
3.1 信頼性と故障
3.1.1 故障曲線
3.1.2 寿命と故障対策
3.1.3 耐久性と故障
3.2 信頼性の基本式
3.2.1 信頼性の基本関数
3.2.2 確率分布関数と信頼度関数
3.2.3 故障率関数
3.2.4 累積確率の推定
3.2.5 点推定と区間推定
3.3 信頼性の指標
3.3.1 総動作時間
3.3.2 時間推移のいろいろ
演習問題[3]

第4章 信頼性関数の基礎
4.1 離散型分布
4.1.1 二項分布
4.1.2 ポアソン分布
4.2 連続型分布
4.2.1 指数分布
4.2.2 正規分布
4.2.3 対数正規分布
4.2.4 ワイブル分布
4.2.5 3母数ワイブル分布
演習問題[4]

第5章 信頼性データの統計的解析
5.1 回帰分析
5.1.1 相関係数
5.1.2 線形回帰分析
5.1.3 正規分布の場合
5.1.4 対数正規分布の場合
5.1.5 2母数ワイブル分布の場合
5.1.6 3母数ワイブル分布の場合
5.2 最尤法
5.2.1 最尤推定値
5.2.2 指数分布の場合
5.2.3 正規分布の場合
5.2.4 対数正規分布の場合
5.2.5 2母数ワイブル分布の場合
5.3 分布のχ2適合度検定
5.3.1 基本的な考え方
5.3.2 判定基準と有意水準
演習問題[5]

第6章 アイテムの信頼性
6.1 信頼性設計の手順
6.1.1 設計の基本事項
6.1.2 安全性の考慮
6.1.3 デザインレビュー
6.2 信頼性予測
6.2.1 予測方法
6.2.2 信頼度水準
6.3 冗長系と信頼性
6.3.1 冗長性
6.3.2 直列系
6.3.3 並列冗長系
6.3.4 系並列冗長系と要素並列冗長系
6.3.5 待機冗長系
6.3.6 多数決冗長系
6.3.7 各種冗長系の信頼度比較
6.4 FMEAとFTA
6.4.1 故障解析
6.4.2 FMEAとFMECA
6.4.3 FTA
演習問題[6]

第7章 アイテムの保全性
7.1 保全方式
7.1.1 予防保全と事後保全
7.1.2 保全性設計
7.2 保全度関数
7.3 アベイラビリティ
7.3.1 アベイラビリティの基礎
7.3.2 瞬間アベイラビリティ
7.3.3 機器アベイラビリティ
7.3.4 使命アベイラビリティ
7.3.5 アベイラビリティの評価
7.4 保全方策
7.4.1 指数分布の場合の最適点検周期
7.4.2 ワイブル分布の場合の最適点検周期
演習問題[7]

第8章 信頼性の抜取試験
8.1 抜取方式の種類
8.2 OC曲線
8.2.1 ロット合格率
8.2.2 抜取試験の信頼水準
8.3 抜取試験方法
8.3.1 計数1回抜取方式
8.3.2 指数分布型計数1回抜取方式
8.3.3 計量1回抜取方式
8.3.4 計数逐次抜取方式
8.3.5 計量逐次抜取方式
演習問題[8]

第9章 信頼性物理と構造信頼性
9.1 信頼性物理の目標と役割
9.1.1 故障物理
9.1.2 信頼性試験
9.1.3 加速試験
9.2 寿命(故障)とストレスの関係
9.2.1 アレニウスモデル
9.2.2 アイリングモデル
9.2.3 マイナー則(線形損傷則)
9.3 構造信頼性の評価
9.3.1 最弱リンクモデル
9.3.2 束モデル
9.3.3 ストレス強度モデル
9.3.4 安全余裕と故障確率
9.3.5 安全係数と故障確率
演習問題[9]

演習問題の解答

付録
A.1 ガンマ関数
A.2 方程式の数値解法
A.3 Excelによる例題の計算例
付表1 .標準正規分布の上側確率
付表2 .標準正規分布のパーセント点
付表3 .ガンマ関数
付表4 .χ2分布のパーセント点

参考図書

索引

アップデート:2009/04/08

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