ルイ モーデル(1872-1952)は次のように述べた.「数論はその成果の量と多様性,証明の美しさと力強さにおいて比類がない.それは数学のもつロマンチシズムの主要な部分を秘めている.ガウスがソフィージェルマンに宛て書いたように,数論の美しさはそれを深く学ぶ勇気をもつ者だけに明かされる.」
数論の命題はしばしばきわめて簡単に述べることができる.そして命題の単純さとその証明の複雑さとの対照が数論の魅力の核心をなしている.
本書は読者に数論の美しさを紹介することを意図している.予備知識としては大学の1,2年程度の微積分,線形代数,群,環,体などの代数系の初歩を学んでいることが望ましい.初等数論については有理整数環Z,素数,合同式などの初歩的知識さえあればよい.第7章と第12章においてのみ複素関数論,コーシーの積分公式と最大値の原理,が用いられる.
たった一冊の本で数論の完全な展望を与えることができないことは疑問の余地がない.本書の内容は本質的にはアレクサンドリアのディオファンタス(A.D.150-350の間,生存年不詳)の名を冠したディオファンタス問題に限定されている.それは2つの主要な側面,すなわちディオファンタス近似とディオファンタス方程式からなる.そしてこの2つの側面は密接に関連している.
講義をより効果的に進めるためいくつかの定理の証明を演習問題とした.言うまでもなくその解答は,他の演習問題と同様,鉛筆を手に辛抱強く探し求めなければならない.
目次 第1章 無理性とディオファンタス近似 1.1 √dの無理性 1.2 eの無理性 1.3 πの無理性 1.4 チャカロフ関数の値の無理性 1.5 ディオファンタス近似 1.6 証明法に関する注意 第2章 実数の級数および無限積による展開 2.1 実数のp進法展開 2.2 実数のエンゲル級数展開 2.3 カントールの無限積 第3章 連分数 3.1 序論 3.2 収束の判定条件 3.3 零による割り算の導入 3.4 Σにおける連分数展開 3.5 ベッセル関数の比 3.6 連分数と無理性 第4章 正則連分数 4.1 実数の正則連分数展開 4.2 eの正則連分数展開 4.3 ディオファンタス方程式 ax+by=c 4.4 正則連分数とディオファンタス近似 4.5 2次無理数と連分数 4.6 ペル方程式 第5章 2次体とディオファンタス方程式 5.1 2次体 5.2 2次体の整数環 5.3 2次体の単数 5.4 Zにおける素因数分解 5.5 素元と既約元 5.6 ユークリッド整域 5.7 ディオファンタス方程式 第6章 平方数と平方数の和 6.1 2つの平方数の和 6.2 有限代数系の構造 6.3 ルジャンドル記号 6.4 F*pにおける計算 6.5 整係数2元2次形式 6.6 4つの平方数の和 第7章 数論的関数 7.1 母関数 7.2 ランベルト級数 7.3 ヤコビの3重積公式 7.4 2つの平方数の和 7.5 4つの平方数の和に関するヤコビの定理 7.6 オイラー関数φ(n) 7.7 lcm(1,2 ・・・,n)の大きさ 7.8 r2(n)の平均値 第8章 パデ近似 8.1 一般論 8.2 ガウスの超幾何関数と2項関数(1 - x)αのパデ近似 8.3 合流型超幾何関数と指数関数のパデ近似 8.4 数論への応用 第9章 代数的数と無理測度 9.1 代数的数 9.2 代数的整数 9.3 超越数とリューヴィルの定理 9.4 無理測度 9.5 ディオファンタス方程式と無理測度 9.6 トゥエ-ロスの定理 第10章 代数体 10.1 代数体 10.2 共役,ノルム,およびトレース 10.3 数体の整数環 10.4 単数 10.5 判別式と整基底 10.6 フェルマーの方程式x^5 + y^5 = z^5 第11章 イデアル 11.1 数体のイデアル 11.2 整イデアルの算術 11.3 イデアルのノルム 11.4 (p)の素イデアル分解 11.5 数体の類数 11.6 モーデルの方程式y 2 = x^3 + kへの応用 第12章 超越数論入門 12.1 代数関数と超越関数 12.2 基本不等式 12.3 マーラーの方法 12.4 証明法に関する注意.ジーゲルの補題 12.5 エルミート-リンデマンの定理 12.6 ゲルフォント-シュナイダーの定理 12.7 ジーゲル-シドロフスキーの方法 演習問題解答 訳者あとがき 参考文献 索引